日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)

感想・レビュー(22)

随分まとまった本を書かれたな、というのが正直な感想。興味深かったのは、植民地帝国についてで他章に比し非常に詳しい。国家と軍が植民地政策へとズンズン進んだイメージで語られがちだが、文官と武官の対立と植民地経営への反映、更に植民地の位置の議論は原内閣の位置づけと相まって面白い。教育勅語についても海後先生の著作は読んだことがなかったので改めて読みたい。新書なので随分知っていることも多いが、近代政治史を眺めてきた著者の総論的まとめは、非常に理解しやすく、腑に落ちた。
ナイス ★1 コメント(0) - 4月21日
80才を超える政治史の泰斗が記した日本近代政治経済史の総論。福沢諭吉に影響を与えたというマルクスと同時代のイギリス政治学者バジョットの論を手がかりに、民主政治、資本主義と貿易、対外膨張政策、天皇制などのテーマで近代日本を俯瞰する。若手学者のような切れ味鋭い論評ではなく、溢れる教養、深い洞察、そして現代から未来を見据える眼力があり、大掴みに時代を捉えるための極めて良質な導き手と思った。特に欧米をモデルにした近代化の中、キリスト教の神に代わるものとしての天皇制という指摘には膝を打った。新書で読めることに感謝。
ナイス ★13 コメント(1) - 4月19日
優。盛り沢山であるが、一品一品の味もしっかりしている。第1章では、政党政治(複数政党制)がなぜ日本で(のみ)可能だったのか。幕藩期の権力の相互均衡システムから説く。2章では、遅れた農業国が資本主義国と成長した陰にあって下支えした大久保に由来する2つの経済路線。3章では、日本近代と切っても切れない植民地帝国への道と国際関係。4章では、西欧の君主制と似て非なる天皇制は、むしろ明治憲法を根拠としたのではなく、教育勅語(人民の師父たる聖君主=社会的帝王)に拠っていた。これらの問題群は、今日なお我々を拘束している。
ナイス ★3 コメント(0) - 4月14日
19世紀イギリスのバジョットの「近代」考察を導き手としつつ、「日本の近代」を考察する。バジョットは「議論による統治」の伝統を「近代」概念の中核におく。東アジアには「議論による統治」の伝統はなかった。それをはじめて創出した日本の近代の意味を問う。/語りかけ口調でわかりやすい。/近現代を見通す視座としてまとまっている。もう少し丁寧に読み込みたい。
日本で複数政党制が成立した淵源を幕藩体制下の合議制に求めたり、「東亜新秩序」を地域主義の一種と位置づけ、東アジア・東南アジアでの垂直的な国際関係が戦後も継続したことなど、興味深い指摘が多々見られる。昨今話題の教育勅語についても言及があり、一般国民に対して憲法以上の影響力を及ぼし、天皇を教主とする「市民宗教」の教典の役割を果たしたと位置づけている。このような当時の位置づけを踏まえれば、文面から「いいことも書いてある」と評価することはできないだろう。
ナイス ★5 コメント(1) - 3月29日

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