日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

感想・レビュー(607)

友人のfacebookの近況で心惹かれた作品。「日本語が亡びる」という、ショッキングな題名である。著者は言語を「普遍語」「国語」「現地語」という三階層でとらえている。英語が「普遍語」として不動の地位を占めている現在、日本語が「国語」として生き残れるかという危機感が述べられている。「書き言葉」とは「話し言葉」を書き表しただけでなく、「普遍語」を書き表したものであること、日本語が「国語」となったのは当り前のことではなく、奇跡であった事も丁寧に述べられている。「日本語の未来」について深く考えさせられた。
普遍性のある物語は時代を選ばないので、率直に言えば今の文壇に光るものがほとんどなかったところで読者は然程困らない。けれど、それを作家の視点から見るとこういう風に見えるのかというのは興味深かった。要するに小説が流行らなくなって漫画に人材が流れて、それも流行らなくなってアニメその他の新領域に才能が集まってるんじゃないかとも思ったけど、どうなんだろう。パリでの話は《少数言語》で小説を書くことの意味について。そこから派生した考察も面白かった。要するにあまりまとまった感想は書きにくい。本好きは読んで損はないと思う。
ナイス ★2 コメント(0) - 2月16日
流し読みのつもりが、読み始めたらそれじゃ失礼な気がしてがっつり読んでしまった。英語が「普遍語」となった20世紀から今世紀。世界を見渡したとき、自分たちの母語/現地語=日本語で書かれた優れた文学が大量にあるというのは実はとても幸運なことなのだと知る。英語が世界中で使われ日本語が亡びつつある流れは止めようもない中、著者の主張は誰もが簡単な会話ができる英語教育ではなく、翻訳のできるより少数の二重言語者の養成とのことだが、はてさて。
ナイス ★22 コメント(0) - 2月4日
発売後すぐに購入して読みかけたのに、積読にしてしていたもの。今回読み通して、再度、自分たちが使っている言葉について考える必要性ありと認識。7章の「人間をある人間たらしめるのは、国家でもなく、血でもなく、その人間が使う言葉である。」「教育とは家庭環境が与えないものを与えることである。」が特に印象的。
ナイス ★5 コメント(0) - 2016年12月30日
人はなぜ本を読むのか、という問いが底辺にあるように思う。叡智の図書館に収められた本を手に取り、その図書館の書架へ新しい本を加えることに、言いしれない喜びを感じる。本を求める。本に震える。それはなぜだろう。答えは書いていないが、そこには洋を問わず共通する感覚と、洋による言語の個別性があるに違いない。だから世界中の作家に共通した幻想、叡智の図書館が様々な形で存在するのだと思わされる。暦も料理も裁縫もみな、残されてきた叡智として、その形の一つなのだ、と想像を広げてくれる。
ナイス コメント(0) - 2016年12月18日
「グローバル社会だから英語を勉強しよう」という我々の多くが持つ言語に対する考えに喝を入れてくれる書です。インターネット社会になって英語が<普遍語>として台頭し、今まで地理的要因で守られていた日本語は危機に立たされます。<普遍語>としての英語は英語に熟達した者がアクセスするようになり、あまたある日本の文学作品は<普遍語>で表され、<国語>で表現されてきた機微ある日本語で書かれた日本文学は滅びの一途を辿ります。本当のグローバル社会は、大事な価値観や表現をありのまま(国語)で伝えることができることかと思います。
ナイス ★5 コメント(0) - 2016年11月27日
たまたま学校の<図書館>に、読みたい本の近くに気になるタイトルの本がありそのまま借りて読了。小林秀雄賞を受賞した水村美苗さんの本で、難しい内容であり読みづらい部分もあったが共感できる部分も数多あった。日本語は英語のような<書き言葉>が<話し言葉>の音を表したものにすぎないという「表音主義」ではなく、<書き言葉>それ自体に意味を持つ「表意主義」の特性を持ち、その言葉自身が日本文化であり<読まれるべき言葉>であると主張している。日本の国語教育は日本近代文学を読み継がせるのに主眼を置き、英語は二の次であるという
ナイス ★3 コメント(1) - 2016年9月8日
日本語教育への提言が素晴らしいと思った。 明治以降の文豪をともかく読み漁ることで日本語を守ろうという彼女の提言は、まさにそのとおりだと思った。
ナイス コメント(0) - 2016年8月5日
水村美苗さんは、米国で長く育ったのに最近日本で発刊した本がすべていろんな賞を受けている。小林秀雄賞は夫君の経済学者岩井克人氏と初めての夫婦受賞。国語=国民国家と運命を同じくして発生、つまり翻訳を介して成長して来たのですが、永遠に続くものでもなく、亡びる時が近づいてるのではないか、それがこの本の伏線だと思う。
ナイス ★1 コメント(0) - 2016年7月26日
再読。以前読んだときより面白く、切迫感を覚えた。そして近代文学を読もうと思いました。
ナイス ★4 コメント(0) - 2016年7月17日
言葉にならない。
ナイス ★6 コメント(0) - 2016年7月9日
これは面白い!読み終わると日本語に対する印象、英語に対する印象がガラリと変わる。最初の多国籍な人たちが集まる会合から最後の日本語に対する愛情の深さまでの流れがすごい。秀逸。英語をシャカリキに勉強している人。英語をバカにしている人。日本語だけで生きようとしている人。みんなに読んでほしい。日本経済は壊れかけていますが、どうせ壊されるのなら、水村美苗さんの本を読んでいまある常識や認識を一気呵成にぶっ壊してもらおう。おすすめ!
ナイス ★4 コメント(0) - 2016年6月14日
「本格小説」に感動して、手にした一冊。やはり、近代日本文学をこよなく愛した筆者の思いがあふれていた。題の「日本語が亡びるとき」は、「三四郎」の広田先生がいう言葉から付けたという。漱石は、明治維新以来「西洋の衝撃」から、身を挺して格闘し、英語(西洋)と日本の間で思い、悩んだ一生を送る。そんな漱石を尊敬する筆者は、今の「英語の世紀の中で」だからこそ、日本語の書き言葉を大切にしていかねばと訴える。アメリカで、20年近く、英語になじめず、「近代日本文学」ばかり読み、フランス語の研究者だからこそ、説得力はある。
ナイス ★7 コメント(0) - 2016年6月12日
漢字、ひらがな、カタカナ。三種類から成る「日本語」。いまある姿は当然。そんな認識が見事に覆されました。地理的条件と歴史の巡り合わせでたまたま欧米列強の植民地化を逃れたからこそ、いまがあるんですね。福沢諭吉や夏目漱石ら先達の苦労や努力も礎となっています。インターネットの普及で全世界が英語圏になろうとするいま、日本文学を読むことの大切さも説いています。第8回小林秀雄賞だけに、読みごたえは充分です。
ナイス ★48 コメント(0) - 2016年6月9日
「ことばなんて道具だ。」昔はそう思っていた。漢字なんて必要ないと思っていた。英語を日本の公用語にという説にも反対ではなかった。それがいかに愚かな考えであるか。大袈裟かもしれないが、全ての日本人に読んでほしい一冊。
ナイス ★3 コメント(0) - 2016年5月21日
まず、言葉は話したりコミュニケーションし、直接そのネイティブたちの考え方などにアクセスするだけではなく、その言語の図書館にアクセスする権利も獲得出来る。そこで、日本語が亡びるということは、普遍語英語の広がりでその日本語の図書館を読む人がいなくなること。読める人がいなくなること。個人的意見として、国語学習の少ないことに関しては、国語だけが国語学習ではないと思ったが、日本の図書館へのアクセスのための国語の時間としての国語の時間は必要かもしれないと思った。
ナイス ★1 コメント(0) - 2016年5月13日
今や日本人は漢語よりも英語のほうが理解できる。のみならず、どの国の人でも読書人ならば、英語をある程度理解できる。だからこそ『私小説from left to right』は、韓国語、ベンガル語、フランス語など、ほかのどの言葉に訳しても、英語の部分を元のままに残し、バイリンガルの形式を再現することができるのです。この小説を唯一訳すことができないのは英語なのです。(略)そしてその唯一の不可能性こそが、今日の世界にある、言語のあいだの非対称性の、もっとも明確なあかしなのです。(PP..92〜93)
ナイス コメント(5) - 2016年5月3日
再読。これから日本が進もうとしている方向について。そして私たちが守らなければならないものについて。文庫も出ています。おすすめ。
ナイス ★4 コメント(0) - 2016年5月3日
日本語に対する自分の向き合い方が少し変わった気がする。漱石を読まなきゃいけない気分になったので、『三四郎』を再読中w
ナイス ★1 コメント(0) - 2016年2月22日
日本がアメリカの植民地になっていたら、普遍語/現地語の二重構造で、英語が普遍語として流通。日本語は現地語として流通していたはず(180頁)。漢文の図書館へ出入りしていたひとたちは、西洋語の図書館へ出入りするのが可能になるにつれ、西洋語の図書館がいかに人類にとって普遍的叡智を膨大に蓄積しているか、理解していった(188頁)。英語の世紀に入った(傍点)ということは、普遍語/現地語の二重構造が、ふたたび蘇ってきたのを意味する(239頁)。
ナイス ★39 コメント(2) - 2016年1月14日

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